身近なレジスタントスターチで「腸活」の勧め
今回は「腸活」に便利なレジスタントスターチについての話題です。
私たちの腸内には1000種類、100兆個とも言われる腸内細菌が棲んでいて、その腸内細菌が私たちの健康に影響を与えている可能性があることが近年わかってきています。
腸内環境を整えることを最近「腸活」という言葉で表すようになってきていますが、腸内細菌と協同して健康をつくることが、健康長寿に有効と言われはじめています。
腸内環境に影響を与えるのは食べ物とともに、飲酒、喫煙、運動、睡眠、ストレス、薬物などが関係しています。健康長寿に近道はないようです。
色々なことが関係する腸内細菌ですが、プレバイオティクス(腸内で有益な作用もたらす微生物の増殖を促進する食物成分)として有用な食材の1つであるレジスタントスターチについての情報をお届けします。
レジスタントスターチ(Resistant Starch;以下RSと略します)とは「健康な人の小腸内で消化吸収されないでんぶんおよびでんぷん分解物」と解釈され、簡単には「難消化でんぷん」と呼ばれています。炭水化物に含まれ、不溶性食物繊維に分類されています。ヒトの大腸に存在する炭水化物のうち最も高い比率で存在し、腸内の細菌群により消化され、酢酸やプロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸を産生し、「腸活」に有効である点が注目されています。食品中のRS含有量は、食品の調理方法や加工法に大きく影響され、現在5タイプ(RS-1~RS-5)に分類され、便通改善効果、大腸がんリスクの低減、ビフィズス菌などの腸内有用菌の増殖作用、コレステロール合成の抑制、脂肪蓄積の抑制、食後血糖値上昇の抑制などの効果が報告されています。
身近なレジスタントスターチで、利用しやすい物の例
○RS-1に分類される全粒粉、精製度の低い穀物、豆類(穀粒などに含まれ消化酵素が作用できないもの)
全粒粉入りのパン 玄米や雑穀米 そば 枝豆
○RS-2に分類される老化でんぷん(一旦加熱して消化できる状態になったものが冷えて消化されにくくなったもの)
おにぎり(米飯の温度が低下した状態) 冷たいそばやうどん そうめん トーストしていないパン ポテトサラダ(冷えたじゃがいも) 冷やし焼き芋
糖尿病の方でも、腸活に有効なレジスタントスターチをとる機会を逃さないよう、炭水化物を適量食べるようお勧めします。炭水化物の適量は各個人によって違いますので、ぜひ管理栄養士にご相談ください。
管理栄養士/日本糖尿病療養指導士 M.K
*参考文献
野本康二「おもしろサイエンス 腸内フローラの科学」日刊工業新聞社
青江誠一郎「糖の種類とその機能について」日本栄養士会雑誌 第66巻 第8号 2023年