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スティグマ

[2022.06.20]

「スティグマ(stigma)」という言葉をご存じでしょうか。

あまり耳慣れない言葉ですが、日本語では「負の烙印」などと訳されます。ある特定の人や集団が、いわれのない差別などによって社会的に不当な不利益を受けてしまうことを意味します。

現在、糖尿病についても「スティグマ」の存在が議論されています。

「糖尿病だから~」「糖尿病の人は~」などの根拠のない思い込みによって糖尿病患者さんが社会的な制約や差別的な待遇を受けてしまわないように、学会や協会を中心に社会全体の啓発活動が進められています(アドボカシー(advocacy)活動と言います)。

 

はじめは小さな「区別」だったものが、時に無意識のうちに「差別」となり、それがお互いの「分断」を生み、最終的には大きな「対立」となってしまうこともあるかもしれません。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やロシアによるウクライナ侵攻などにより社会全体が不安な空気に包まれてしまっている現在は、残念ながら様々な場面において小さな違いから対立が生じてしまいやすい状況かもしれません。それだけに、これまでにも増して「スティグマ」の解消が求められています。

 

糖尿病という病気は、膵臓にあるベータ細胞から十分なインスリンが分泌できず血糖が下がらなくなってしまった状態です。もし、糖尿病という病気を「血糖が高い病気」ととらえれば、糖尿病の人は「血糖値が高い人」、糖尿病でない人は「血糖値が高くない人」となりここに明確な「区別」が生じてしまうかもしれません。

一方、糖尿病という病気を「膵ベータ細胞を守らなくてはならない病気」ととらえればどうでしょう。糖尿病をもつ人はその治療として「膵ベータ細胞の保護」が大事であるわけですが、同時に、糖尿病でない人にとっても「膵ベータ細胞の保護」は糖尿病の予防のために重要です。つまり「膵ベータ細胞」という視点から考えれば、「膵ベータ細胞を守る」ということは糖尿病の有無に関わらずすべての人にとっての共通の目標となり、両者の間に「区別」がなくなることになります。

そのような視点で糖尿病をとらえ直すことにより、糖尿病のある人とない人との間の垣根が少しでも低くなり、ひいては「スティグマ」の解消にもつながることを願っています。

 

院長 税所

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