尿に糖が出ると糖尿病?
糖尿病は「尿に糖が出る病気」と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
たしかに、健診などで尿糖が出ていることをきっかけに糖尿病が診断されることは多いです。しかしながら糖尿病の方でも尿糖が出ていないこともありますし、また尿糖が出ていても糖尿病ではない場合もあります。
つまり糖尿病の診断は尿糖だけでは行えず、血液検査を行う必要があります。
糖尿病とは「慢性の高血糖を主徴とする症候群」であり、血液検査で血糖値が高い場合に「糖尿病」と診断されます。血糖値は空腹時に測定して110 mg/dl未満が正常ですが、空腹時の血糖値が126 mg/dl以上であったり、空腹時以外の血糖値が200 mg/dl以上あるような場合には糖尿病と診断されます。
また、血糖の指標にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という指標もあります。HbA1cは血糖値が高い状態が続くと上昇し、6.5%以上が糖尿病の診断基準になります。
一般に血糖値が160~180 mg/dl以上になると尿に糖が出てきます。したがって血糖値が高いと尿糖が陽性になりますが、血糖値が正常でも尿糖が陽性になる方もいます。そういう方はもともと腎臓が尿に糖を排出しやすい体質のため「腎性糖尿病」と呼ばれますが、血糖値は正常ですので治療の必要はありません。
また現在、糖尿病や心不全、腎臓病の患者さんで使用されるSGLT2阻害薬というお薬は尿に糖を排出させる作用があるため、このお薬を服用中の方は血糖が正常でも尿糖が陽性となります。
このように「糖尿病」と「尿糖」は密接な関係がありますが、両者は必ずしも「=」(イコール)の関係ではありません。そうした誤解や偏見をなくすために最近では日本糖尿病協会を中心に「糖尿病」という名称を、英語名の「ダイアベティス」(Diabetes)に変更しようという提案も出されました(糖尿病の新たな呼称「ダイアベティス」とする案発表 | NHK | 医療・健康)。
こうしたことをきっかけに、今一度みんなで「糖尿病」について考え、理解を深めることができればよいですね。
院長
(本ブログは中野区医師会ウェブサイト「医療トピックス」にも掲載予定です)