脂肪肝のある糖尿病の診療を考える in 東京
本日はSGLT2阻害薬デベルザの発売10周年記念講演会として「脂肪肝のある糖尿病の診療を考える in 東京:奈良宣言2023の位置づけ」が開催されました。
昨年、日本肝臓学会から「奈良宣言2023」が発表されました。この宣言では肝疾患の早期発見・早期治療を目指して、健康診断などで肝機能検査の指標である「ALT」の値が30より大きい(ALT >30)場合にかかりつけ医の受診が推奨されています。
かかりつけ医では必要な採血や腹部超音波検査などによりその原因を検索し、必要があれば消化器内科専門医との診療連携を行い適切な治療につなげます。近年、これまで肝臓病の中で最も頻度が高かったB型肝炎、C型肝炎といったウイルス性肝疾患に対する治療は劇的な進歩を遂げ、治癒も目指せる時代となりました。一方で、肥満や生活習慣病を基盤として生じる脂肪性肝疾患の患者が急増し、脂肪性肝疾患から肝硬変や肝臓がんなどに進展する例が増加しています。脂肪性肝疾患は肥満(BMI 25以上)の方の70%以上、また糖尿病のある方の約半数に見られます。脂肪性肝疾患をもつ方は肝臓の中で炎症を生じ、その結果、肝臓の線維化が進むと肝硬変に進展し肝不全に至ったり、また肝臓がんを発症する可能性があります。また、脂肪性肝疾患をもつ方は心筋梗塞、脳梗塞といった心血管疾患を発症しやすいことも報告されています。したがって、糖尿病のある方の診療においても脂肪性肝疾患の適切な評価と治療が重要になります。
本講演会では肝臓専門医の先生から脂肪性肝疾患の最新知見について詳しくご解説頂き、その後脂肪性肝疾患(MASLD)を合併した2型糖尿病の治療戦略について消化器内科の先生も交えてディスカッションを行いました。明日からの診療で脂肪肝の重要性を再認識するよい機会となりました。